「人魚川の点景」 詩野うら 著
主人公曰く「きっと学校に近いとかそんな理由」で、近所のゴミだらけの汚い川に放流された稚魚の人魚が、川に捨てられていたフラスコの中に入り込んで成長してしまい抜け出せなくなってしまった。それを見つけてしまった主人公達のもやもやと小さな一歩の話。
犬猫ではなく架空生物の人魚を中心に描くことにより、教誨的な内容にならずにすんだジュブナイル漫画。
人魚自身にとっては救いのない話だが、主人公達の感じた何かの証として、最後にイコンのように鎮座する標本の人魚が美しい。
人魚が死んだ時のもやもやした感情が
標本を作る過程を経て
整理されてゆき、やがてささやかながら行動に移る。
そして後日談的に、主人公二人組は「偽史山人伝」の中で生物研究所のヒトとして登場するのだ。
考え続けて進み続けてほしい。
見て見ないふりは知的怠慢だよね。
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かいぼりをエンターテイメント仕立てに番組化し、専門家という人が、池から出てくる生き物について「これは外来種ですので駆除しなければいけません」「これは在来種ですので保護しなければいけません」とてきぱきと選定してゆく違和感。
楽しみのために魚を釣って、駆除をうそぶいて笑顔で殺す釣り人親子。快楽殺人的なグロテスクさ。
外来種駆除を名目に補助金目当ての漁協。もう一方で外来魚で入漁料を取りつつ架空放流で補助金を横領する漁協。
河川へのニシキゴイの放流事業の裏にある、養殖業者の不良品(!)の買取処分問題。
もう欺瞞にすらなっていない。
そこまで生き物に対し割り切れて羨ましいよね。
じゃあお前はどうなのよ。
相手を非難することでその場から逃れようとする人じゃあないか?
……そうです。
だからこの漫画に惹かれたのかもしれない。