「セス・アイボリーの21日」 星野之宣 著
最近漫画は縦読み(ネット漫画系)か横読み(書籍系)か考えていて、ふと圧倒的密度の本作を思い出し、久々に再読しました。5分で読めるボリュームですし。
うん。今の段階では横読みの表現力に軍配ですね。
ネット漫画の縦読みではまだまだ表現できない密度がある。
読み方の変化(雑誌からタブレット)でいずれは変わっていくでしょうが、横読みのコマ割り文化はすたれないで欲しいものです。
閑話休題。
全24ページの短編ですので、ぜひ一読をお薦めしたいです。
正確には「スターダストメモリーズ」という短編漫画オムニバスの6話目です。
個人的な短編漫画ベスト10の中で、入れ替わることなく常にランクインしています。
21日間のサバイバルのカウントダウンが始まってから、21ページ目に救助船がくるというのもふるっています。
物語は生物の成長サイクル(老化)が異常に早い無人惑星に不時着した主人公が、クローン技術と圧縮学習技術を用い、世代を重ねることにより命を繋ぎ、救出を待つというもの。
クローンは法律で禁止されている‥‥ので救出された「三代目セス」は「初代セス」として生きてゆくでしょう。
しかし1ページ目の不時着した「初代セス」と
最終ページの救出された「三代目セス」は同一人物といえるのでしょうか?
救出隊目線からは、同一人物であると断定せざるをえません。
そもそも目の前の本人に、そんな疑問すら抱かないでしょう。
ですが私たち読者と「三代目セス」だけは知っています。
その間にいた「二代目セス」の存在と彼女の悲しみと葛藤を。
短いながら色々と考えさせられる物語です。
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(雑記)
これを読み返す私も、初読の時より年をとりました。
見苦しくも「後進の指導」とか、社会や人生での自分の存在意義を考えることもでてきました。悲しいかな「教えたがりおじさん」の爆誕です。
そうなってくると、短いながら生きる目的を知り、目的を果たして死んでいく「二代目セス」の人生は、幸福で充実したものではなかったかと思うように変わってしまいました。