「手指の鬼」 鏡ハルカ 著
短編漫画の真髄。
絵で語る漫画ならではの名作。
昨年発売のアフタヌーン四季賞で拝読しましたが、最近コミックDAYSでもUP(無料)されたので再読。
せつない話ですが、やっぱりよかった。
それと恥ずかしながら今回の再読で気がついたのですが、勝部と捨の昼寝の際にかかっていた羽織がお峰の着ていた柄。
やたらと絡んでくるお峰の態度、勝部を逃がした理由、鬼の面をもった柔和な老婆の外観の物の怪に新たな解釈が生まれ、感想を書きたくなりました。
お峰、過去に稚児食いの儀の子を育て、鬼に食べられた経験がありそう。
閑話休題。
ストーリーは、鬼の勝部が、人間の幼子を攫い大切に育て7つになる前に食らう「稚児食い」という習わしがある鬼の集落で、攫った幼子(捨)を育てているうちに複雑な感情が芽生え、捨を食われる前日に逃がします。
そして捨が成人して鬼の討伐隊入り、勝部を捕らえ処刑に立ち会うというもの。
捨は逃げる前に、勝部に指を齧られます。
捨が討伐隊になったということは、可愛がられた思い出とその時のトラウマに悶々とし、勝部に再会し真意を問う可能性を信じてのことでしょう。
捕らえた勝部の悪態に厳しい目を向ける捨が
勝部の昔語りによって、過去の真相を知り、慈しみをもって育てられた思い出(しかも勝部は自覚無し)がわきあがり、唇をふるわせ追いすがろうします。
そして語ることによって、自分の感情と捕らえた男が捨と気づく勝部。
捨の幼少期、勝部に向けられる捨の母を見るような眼差しに湧き上がる感情(今風だともやもや?)を把握整理できず、厳しい目をして思った
が柔和な笑顔で「そんな目でみるなったら」と言いながら処刑されるエンド。
最後の一コマ、中世の宗教画的というか。
文芸ですと杜子春のように、最後に「母上」とセリフがありそうですがここは漫画、セリフも「そんな目」も描かず、一コマに喜(勝部)、怒(処刑者)、哀(捨)、楽(勝部)の物語すべてを表現し、たたんでます。
すげ。
無料で読めます。
短いですのでぜひ読んで確認してほしい。
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お峰の勝部へのセリフ「あなたは捨様を慈しんでいたのだわ!!」。
作中、お峰だけが捨、勝部のことを分かっていた。
本人達も分かってないのに。
絶対同じような思いをした経験者なんだろうな‥‥。
馬に蹴られるってことは恋路?!
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モアイでは縦読み、コミックDAYSでは横読みです。
漫画を語る上で、そろそろ避けては通れない話題かも。
私は横読みの方が好きだな。